脊椎後弯症 ~軟骨無形成症の合併症と乳幼児期にできる予防法~

治療と医療

指定難病である骨系統疾患・軟骨無形成症の子が生まれると心配なのが合併症です。

今回はいくつかある主な合併症の中から脊椎後弯症せきついこうわんしょうについて詳しく書いていきたいと思います。

※ここに書いている内容は、軟骨無形成症を持つ息子・モーリーと私たち家族の経験、そして骨系疾患の医療カンファレンスで得た知識をもとにまとめています。私は医師ではないため診断はできません。お子さんの症状に合わせて、必ず医療機関での受診と診断をお願いします。もし現在の担当医の診断に不安がある場合は、セカンドオピニオンを利用することもできます。セカンドオピニオンについてはブログでも紹介していますので、参考にしてみてください。→こちら

背骨の弯曲 (側弯症・後弯症・前弯症)

背骨の弯曲は骨系疾患では大きな問題・合併症の一つです。

携帯電話の普及に伴って近年では携帯電話の見過ぎで脊椎が弯曲したり、姿勢の悪さからくる弯曲、加齢からくる弯曲など決して骨系疾患に限らず起こる可能性があります。

脊椎の弯曲は大きく分けて3つあります。

側弯症そくわんしょう(Scoliosis):
背面から見た時、背骨が左右に弯曲した状態。背骨(脊椎)上部、下部で起こる
前弯症ぜんわんしょう(Lordosis):
体を横から見た時、背骨が体の内側(お腹側)に反ったように弯曲している状態。首や腰(頸椎けいつい腰椎ようつい)に多い。
後弯症こうわんしょう(Kyphosis):
体を横から見た時、背骨が後ろ側に引っ張られるように弯曲している状態。胸やお尻の部分(胸椎きょうつい仙椎せんつい)に多い。

側弯症そくわんしょうは体を背面から見たときに背骨(脊椎)が左右から引っ張らて弯曲しているのに対して前弯症ぜんわんしょう後弯症こうわんしょうは背骨(脊椎)が前後に弯曲していることを言います。原因は色々あるものの、先天性や姿勢の悪さ、加齢によって背中が丸まってくる場合が多いです。

通常の後弯症は胸とお尻の部分(胸椎と仙椎)が多いのに対して軟骨無形成症では胸から腰の間部分(胸腰椎移行部)の後弯が見られることが多いです。これは生まれた時からなんとなく背中が少し突き出てるのかなと確認できることが多いです。

後弯ってどうやって診断するの?

後弯は背骨のレントゲンを撮って整形外科医に診断してもらいます。

診断をする際、Cobb角というのを測定して弯曲している角度を見ます。このCobb角の角度によって軽症~重症を診断します。

15~30度 正常範囲内
30~45度 予備軍または軽度
45~60度 中度
60~80度 重症

若年性の後弯、軟骨無形成症の後弯が詳しく書かれているサイトはものすごく少ないため、主に成人や軟骨無形成症ではない方の後弯症についての資料を見つけました。医師が書いてくださった後弯の資料の中で医療者じゃない私でも一番わかりやすいと思ったサイトなのでよかったらご覧ください。→こちら

軟骨無形成症の後弯

上記で書いた通り、通常の後弯は胸のあたり(胸椎)が曲がるのに対して軟骨無形成症では胸から腰の間部分(胸腰椎移行部)の後弯が見られることが多いのが特徴的です。

そして、多くの軟骨無形成症は赤ちゃんの時期に軽度の後弯~中度の後弯を持って生まれ、お座り、歩行ができるようになってくると体幹や筋肉が鍛えられてきて徐々に後弯が解消され、自然治癒していくのも特徴的です。でも、絶対悪化しないというわけではありません。軟骨無形成症の中には後弯が悪化して治療を受けるケースも一定数いるのが現状です。

軟骨無形成症の特徴から見る後弯

多くの軟骨無形成症の子は後弯が重症化する例は少ないものの、軟骨無形成症で生まれた以上、全員に悪化、重症化する可能性があります。

軟骨無形成症の子は基本的に関節が柔らかく、運動発達に多少遅れが出る子が多いと言われます。関節が柔らかいと、骨や関節を支えるはずの靭帯や筋肉の張りが弱く、姿勢が安定しにくくなることが考えられます。後弯が悪化するポイントはここにあると考えられます。

・ 姿勢が崩れやすく、安定しにくい
骨盤や背骨をまっすぐに保つ力が弱いと、座る・立つ姿勢が丸くなりやすい

・筋肉が疲れやすい
姿勢を支える筋肉が負担が大きく、疲れてくると背中が丸くなりやすい。

後弯を改善していくためには体幹・筋力が非常に重要だということです。筋力がついて、座れるようになったり、歩行ができるようになることで後弯が改善していくのは体幹・筋力が少しずつUPしていくからです。

もし、整形外科医から軟骨無形成症の子の中でも関節がより柔らかいと指摘されるようなことがあれば特別注意して経過観察してもらうようにしましょう!

予防方法

赤ちゃんの時期に後弯が悪化しないよう絶対使ってはいけない育児グッズや、やってはいけないことがあります。

絶対使用を避けてほしい育児グッズ

・抱っこひも
・Bumboなどの幼い時期に座位をさせるような椅子
・赤ちゃん用の市販の歩行器
・バウンサー

やってはいけないこと

・縦抱きだっこ
・本人がまだ一人でできない体勢をさせる。
(座れないのに座らせる、立てないのに立たせるなど)

抱っこひもやバウンサーは背中や首が曲がって軟骨無形成症のもう一つの合併症、乳児突然死症候群を起こす原因にもなりかねません。絶対使用しないのがベストだと思います。

バンボ系お座りチェア、歩行器は後弯に最悪だと言われています。絶対使用しないでください。

縦抱きだっこはしないというのはなかなか難しいかもしれません…生活していればどうしても縦抱きが必要になるシーンがあると思うので…なるべくしないように意識だけはするようにしましょう!

そして大事なのは本人が自らとることのできないポジション、体勢は絶対させないこと。座れないのに椅子に座らせたり、立てないのに立つ練習をさせたり…これは絶対にさせてはいけません。本人の体幹・筋力・骨格・バランス、いろんな意味で準備が整っていないのに無理をさせると後弯が悪化します。

そして、もう1つ非常に重要なのが…

本人ができる体制はどんどんさせて筋力をつけること!!
※あくまでも本人自らができる体制。

寝返りができるようになった、ずりばいができるようになった、つかまり立ちができるようになった、お座りができるようになった(軟骨無形成症ではお座りより先につかまり立ちができるようになるのはよくあることです)…

こういった本人ができるようになったことはどんどんさせてあげてください。これは体幹・筋力をつけるのに非常に大事です。ただ、お座りだけは負担が大きいのでよく様子を見て本人の負担にならないようにしたり、あまり長時間で本人の姿勢が悪くなるようなら休みを入れつつにしましょう!

※上記の情報はいくつかの骨系疾患・軟骨無形成症の国際カンファレンスにて参加した際に講義を受けた内容です。アメリカの国際カンファレンスでもヨーロッパの国際カンファレンスでも共通認識としてシェアされ続けている内容だそうです。

治療方法

基本は経過観察です。悪化しているのが見られるとコルセット(矯正器具)をオーダーメードで作成して治療することが多いです。カンファレンスの参加や多くの症例をいろいろなコミュニティを通して見ていると早い時期にコルセット(矯正器具)治療を始めた子は治療期間が短く済んでいる子が多いなと感じます。

重度になると脊椎管狭窄症という合併症を発症する場合があります。脊柱管狭窄症を発症すると主な治療は手術による除圧術(狭くなった脊柱管の通り道の通りをよくしてあげる)、そしてそれに合わせて背骨(脊椎)の固定術(骨を正しい位置に固定する)をすることがあります。

モーリーの症例

実はモーリーも医師から軟骨無形成症の子の中でも関節がより柔らかいと指摘されていました。そして関節の柔らかさから何人かの医師にこの子は座ったり、歩けるようになるまで時間がかかると思うとハッキリ言われていました。

診断

それでも座ったり歩けるようになればきっと後弯も治るだろうと思っていました。1歳半の時、モーリーの後弯は重度かもしれない…と初めて診断されました。

はじめに紹介したこの写真、実はモーリーの実際のレントゲンです。Cobb角は73度と重症。また、医師が懸念点にあげたのが骨の変形です。

白い→の後弯部をズームした写真がこちら。※少し画像が粗くてすみません。

脊椎は本来、写真の上にあるイラストのように四角っぽい形に羽が生えたような形をしているのが正常なのですがモーリーの場合は写真の下にあるイラストのように後弯によって脊椎同士がつぶして傷つけあってしまっています。そのための脊椎とその上下の脊椎の形が変形してつぶれた四角形や削れ過ぎて三角形に近い形になってきているのがわかると思います。

治療

軟骨無形成症の重度後弯になると自分自身の自然治癒力で治すのは難しいため、モーリーの場合はコルセット(矯正器具)を作成して毎日着用するという治療をしています。睡眠時無呼吸症候群があるため寝ている時の着用は不可。昼間に12時間の着用と医師からは指示されています。

2歳0か月 初代コルセット
コルセットなし 73度 → コルセット有り 54度

呼吸に問題を抱えるモーリー。コルセットを毎日したくても風邪をひいたり、調子が悪いと呼吸優先で必ずしも毎日着用できず…悩ましい思いでいました。

2歳10か月 2代目コルセット
コルセットなし 89度 → コルセット有り 41度

まさかの悪化していました…正直衝撃過ぎて…2歳で歩行できなかったモーリーが2歳6か月で歩き始めたのもあって少しは改善しているのでは?と期待していたので落ち込みました。ちなみにモーリーは上記にあげた、赤ちゃんの時にやってはいけないことは避けて予防してきました。子供3人いるのでどうしても縦抱き抱っこをしなくてはいけない時が度々あったくらいです。

ここまで予防しても悪化する、なかなか治らないのは軟骨無形成症の中でも稀だそうです。正確な数字はないものの100人に一人くらいじゃないかと言われました。医師はなるべく手術は避けたいし、彼にとって負担の少ない良い人生を歩んでほしいから頑張ろう!と一緒に取り組んでくださっています。

※現状、治療はここまでの段階ですが今後、治療の経過を更新していきます。

まとめ

モーリーのレントゲン怖い!と思いませんでしたか?こんな背骨曲がっていて大丈夫なの?と恐ろしくなりますよね…

私が息子・モーリーの経験を通して伝えたいのは赤ちゃんの時の予防を徹底しましょう!ということです。中にはうちは抱っこひも使ったけど大丈夫だった、バウンサー問題なかったよ!って子もいるかもしれません。

でも、軟骨無形成症と言っても子供によって合併症の有無や軽度~重度は様々です。赤ちゃんの時点では自分の子が大丈夫な側なのか、合併症が重度になりやすい側なのかはわかりません。赤ちゃんの将来を考えるなら予防法を守ってなるべく問題なしまたは軽度で育ってほしいと思います。そのため、モーリーのレントゲンや実例を挙げて書きました。

また、周りの軟骨無形成症に関する情報から座ったり歩いたりできるようになれば治ると信じてて重度かどうかの知識もなく、整形外科にかかるのが遅かったかなとも反省しています。なので整形外科も早いうちから診察を受けて、経過観察も十分に行いましょう。

そして、なるべくコルセット(矯正器具)をしたくない、何とか体幹・筋力をつければいいんじゃないの?そう思った人もいると思います。体幹・筋力を鍛えるのは非常に大切です。でも骨が削れ始めていたら要注意です。体幹・筋力は後からでもつけられますが削れてしまった骨を元に戻すことはできません。

脊椎の手術は受けなくて済むなら絶対受けないに越したことはありません。体を支える大切な部分ですし、手術をすることで出てくる不便さや大変さもあることでしょう。モーリーの経験が、私の後悔が無駄にならないよう、一人でも多くの軟骨無形成症を抱える子のママパパに届いて、お子さんたちのベストなケアにつながるといいなと思います。

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