こんにちは!軟骨無形成症を持つ息子・モーリーの母、えりかです。アメリカで3人の子育てをしています。
今回は医療ケア児に向けられる言葉…について書いていきたいと思います。
家族の中に医療ケア児がいる人で医療ケア児に向けて心無い言葉を向けられて傷ついた経験がある人は私たちだけではないと思います。とくに見た目が特徴的になる疾患を持っている子は見た目と言うわかりやすいところをターゲットにして偏見やからかいの対象になりやすいです。
今回は長女・りっちゃんとその同級生との間で起こったトラブルをテーマにきょうだいとしてのりっちゃんの気持ちや親としての想い、私のとった行動を綴っていきたいと思います。
この記事を読んでくださった方が様々な人がいるこの世界への理解と思いやりについて今一度考えるきっかけになったらとっても嬉しく思います。そして医療ケア児と共に生きるご家族の皆さんは記事を読んで共感できる部分があったら嬉しいです。
この記事は私たちの実体験をもとに書いていますが、すべての人が同じ解決法で解決できますよと言うことではありません。皆さんそれぞれの状況や違う困難があると思います。あくまでも一つの経験談として読んでいただいて、考えるきっかけや何かパワーをもらえるような記事になっていたらいいなと思っています。
娘からの告白 同級生から医療ケア児の弟への悪口
長女・りっちゃんが小学校3年生の時、ある日、学校へお迎えに行くととても悲しそうな顔をして帰ってきました。

どうしたの?

最近、同級生の男の子たちがモーリーの悪口を言ってくるのがすごく嫌なの。

そっか…どんなことを言われたの?

『お前の弟の頭デカい』って…
私は、とうとうこの時が来たか…と思いました。いつか息子の体の特徴を見て心無い言葉をかけられる日が来るだろうと心のどこかで準備をしていた自分がいました。なのでどこか冷静で落ち着いていました。

まぁ…そういう体の特徴で悪口を言うのはよくないけど…モーリーが頭大きいのは事実だからね…『そうだよ!頭大きいよ。でもすごく頭いいんだから!』って言ったらいいんじゃない?

私もそう言ったの。でも『正直、おまえの弟はバカだと思う!』って…
そういわれてすごく嫌な気分になった…すごく悲しくなった…
少し泣きそうになりながら心の内を吐き出してくれました。
医療ケア児:モーリーときょうだい児:りっちゃんの気持ち
モーリーは当時まだ2歳。自分に向けられた悪口の内容も意味も理解できません。そのため、この時はモーリー本人がこの言葉で傷つくことはありませんでした。でも弟大好きなりっちゃんはこの言葉が深く刺さって心がえぐられたようでした。
普段から弟がかわいくて仕方ないようで溺愛しているりっちゃん。りっちゃんは誰よりもモーリーがこの数年間いろんなことに直面しながらも頑張る姿を見てきました。人一倍頑張ってきた弟の姿を見てきたからこそ、この悪口が許せなかったのだと思います。
母として感じること・想い
もっと話を聞いてみると数週間前から週に何度か言われるようになったとのこと。自分で何とか弟と自分の気持ちを守ろうと立ち向かっていたことを知りました。正直、りっちゃんが誇らしいと思うと同時に親として何とも言葉にできない、心にじんわり痛みが広がるような感覚がしました。
モーリーに障がいがあることも、難病を持っていることも、誰のせいでもありません。自分のせいでもなく、責任のないことで悪口を言われ、いじめの入り口のようになり始めていることに親としてモーリーにもりっちゃんにもただただ申し訳なく思いました。
そして、頑張って弟のために立ち向かってくれていたことに大きな感謝の気持ちとりっちゃんが愛情深く、優しい、自分で行動できる子に大きく成長していることを実感して一人の人として尊敬しました。
親として悩むところ
りっちゃんからこの告白を受けた時、モーリーが同じ学校の特別支援学級に入学する1か月前でした。
※私たちの住むテキサス州ではECSE(Early Childhood Special Education)という3歳から5歳対象で特別な支援が必要な子供たちのための公立就学前教育プログラムがあります。モーリーは姉の通う学校内にあるこのプログラムに通い始める予定になっていました。
私の懸念すること
私の懸念はこれがどんどんエスカレートしていってりっちゃんがもっと傷ついたり、いじめへと移行していかないかということ。今はまだ学校で起きていることも、りっちゃんの同級生が言った言葉も理解できないモーリー。でも今後、姉が自分のせいで悪口を言われ、自分のために戦っていると知ってどう思うのか…りっちゃんとモーリー、どちらも精神的なダメージが心配でした。
モーリーが学校に通い始めれば、必然的に校内でモーリーを見かけることも出てくるでしょう。こうした悪口が悪化したり、周囲にもそういった影響が広がることも考えられます。直接、モーリー本人にも向けられるようになる可能性もあり、不安と危機感を感じました。
自分で戦うすべを身につけてほしい…
モーリーの病気は遺伝子疾患なので完治することはありません。モーリーが難病・障がいと共に生きていくことも、りっちゃんと次女・あっちゃんがモーリーの姉・家族として生きていくことも、絶対に変わらない事実なのです。
今回の出来事はこれからも起こるかもしれない嫌なことの一つにしか過ぎないのかもしれません。そう考えると、りっちゃん本人が解決することが大切なのかもしれないと思いました。そういった力を身に着けるチャンスをもらったのかもしれないとも考えられました。
そもそも病気や障がいを乗り越えて人一倍頑張る人をからかうことを良しとしていいのか
モーリーの悪口を言っている子供たちについて考えてみました。
学校入学前とはいえ、モーリーはりっちゃんの同級生や親御さんの間では有名な存在で病気のことも低身長症(Little people)であることも認知されていました。
8歳や9歳という年齢からこういった言葉で人をからかっていいと思っている思想…そのままの価値観でいいのだろうか?社会には病気や障がいの有無、見た目、人種の違い、貧富の差、目に見えない課題を抱える人…いろんな人が世の中には存在することを理解し、社会を共にすることを学ぶのは大切なのではないだろうか?そういった自分との違いから差別的な発言をしたり、侮辱するのは良いことではないと学ぶ良い機会なのではないか?と思いました。
発言をした子にしてみれば完全に余計なおせっかいかもしれません。でも、モーリーという存在をきっかけに自分と状況の違う様々な人のいる社会への理解と思いやりの輪を広げていくことに意味があるように感じました。
私たちが悩んで決めた対応
親が何でも介入すべきではないかもとは思ったものの、どうするのがいいか迷いました。今回はりっちゃんもある程度、自分で戦う努力をして改善していないのと本人もどうしていいかわからないと悩んでいたのもあって、夫とよく考えたうえで介入すべきと判断しました。
担任教諭との話し合い
まず、担任の先生に相談しました。
担任の先生にはりっちゃんから聞いた事実を説明の上、
・こういったことがいつか起こるのは覚悟していたので怒ってはいないこと。
・娘に全く責任のない、どうしようもできない内容でからかわれるのは娘が不公平なので親として何とかしてあげたいこと。
・娘自身も立ち向かったが収まる気配がないこと。
・病気や障がいを持って生まれ困難を乗りえてきた子を悪口やからかいの対象にするのがOKだと思ってほしくないこと。
・来月のモーリーの入学以降、エスカレートしないか心配。入学前に解決しておきたい。
と、伝えました。
担任の先生はこの事実を知らず、とてもびっくりしたのと同時にその場で顔色が変わり、憤慨していました。
この相談時に私は家にあった低身長症やバリアフリーの絵本を2冊持って行きました。先生が内容を確認して子供たちへの説明として良い内容だと思えば読み聞かせてくださいと先生に渡しました。
先生は「すぐに対応します。私のクラスでこういったいじめや差別発言は絶対許しません。ちゃんと対応しますのでご安心ください。」と心強い言葉をもらいました。
ママ・パパのグループチャットに私の想いを相談
りっちゃんの同級生の親御さんたちとは非常に交流や繋がりが深く、多くのママ・パパたちがアプリのグループチャットを通じて繋がっていました。そこで”相談”という形でメッセージすることにしました。
※実際には英語で送りました。その時のメッセージの和訳文です。
みなさん、こんにちは。
少し相談したいことがあります。長文のメッセージになってしまい、すみません。実は娘が何人かの男の子たちから繰り返し「おまえの弟、頭がすごくデカい!」と言われ、とても傷ついています。娘が「やめて」と言っても、彼らは聞く耳を持ってくれなかったそうです。娘が弟をかばおうと「弟の頭が大きいのは、すごく賢いからだよ」と言い返したところ、彼らは「正直、おまえの弟はバカだと思うよ」と答えたそうです。
私たち家族としてはこうした困難が起こり得ることは想定していたので、大丈夫です。しかし、障がいや病気を持つ人に対して、偏見を持ったり傷つけるようなことを言ったりしてもいいんだ、と子供たちに思ってほしくはありません。娘が自分自身のしたことではなく、弟のことでターゲットにされていることに親としてとても申し訳なく思っています。また、これがいつかモーリー(りっちゃんの弟)の心にも影響を与えるのではないかということも心配しています。
りっちゃんの学年の子たちはモーリーと学年が違うので、直接的な関わりはないかもしれません。でも、この学校のコミュニティは、みんなが長く友人関係を築いていくことになるでしょう。モーリーを単なる「りっちゃんの弟」としてではなく一人の人間として理解し、からかいの対象にしないでもらいたいと心から願っています。
このような理解を育むために、何か良いアイデアはありますか?こうした状況に直面するのは初めてで、どうするのが正解なのか悩んでいます。個人的なことを相談してしまい申し訳ありませんが、ここにいるパパ・ママのことを本当に信頼しています。すべての家族にとって、ハッピーな形で解決できる方法が見つかればといいなと思っています。
私の対応のその後…
私が対応をした後、どうなったのか…
ほかの親御さんからの心温まる・心強い言葉の数々
多くのママ・パパからたくさんの温かいメッセージを頂きました。
その中の一人のママの素敵な言葉の一部を抜粋させていただきました。
※実際には英語で送られてきたものです。その時のメッセージの和訳文です。
りっちゃんが直面した心ない振る舞いを聞き、本当に胸が痛みます。このことを私たちに共有してくださったことに感謝します。 たとえ直接関わっていない子供たちであっても、「優しくあること」がいかに重要かを繰り返し伝えるのは、いつだって良いことです。それに加えて、こうした場面に遭遇したときにどう行動すべきかを教えることも大切です。「何かを目にしたら、声を上げよう(See something, say something)」ということです。(これは「告げ口」のことではなく、敬意と思いやりの心を育むという意味。)
私は、子供たちが卒業した後のコミュニティ(高校など)と密に関わる仕事をしていますが、今のうちにこうした問題に対処しておけば、将来的に身体的、文化的、宗教的、政治的、あるいは人種的な偏見から生じるハラスメントや差別を防げる可能性が高まります。 残念ながら、高校生であっても、こうした問題(差別や偏見)には本来あるべき姿以上に苦労させられることがあります。
私たち全員でこの問題に取り組めるよう願っています。私たちが真摯に向き合うことで、このコミュニティはより良くなるはずです。信頼して、勇気を持って投稿してくださり、ありがとうございました。
親御さんたちから私たち家族に寄り添った心温まる言葉や、一緒にこの問題に立ち向かおうという心強い言葉の数々を頂きました。
・勇気あるメッセージをありがとう。
・改めて子供と大切なトピックを話すチャンスだと思う。
・家族で話し合おうと思う。
・傍観せず正しいと思うことに立ち上がることの大切さを教えたい。
・本当の意味の愛と優しさをちゃんと子供に伝え、教えたい。
・こんなことは起こってほしくないが問題を起こす側ではなく、解決できる側でありたい。
など
正直、ママ・パパたちのグループチャットにメッセージを送るかどうかすごくすごく悩みました。送ると決めた後もどういった言い方で送るのが角が立たず、伝えたいことをちゃんと伝えられるか…悩みまくって考えに考えて送ったメッセージでした。なので多くの親御さんが私の気持ちや想いに賛同してくれてとても心が熱くなりました。
残念だったのは息子のことをからかっていた数人の男の子の親御さんからは何の反応もなかったこと…まぁそうか、と思いながら1番伝えたい子の親御さんには伝わらなかったか…と少し悔しく思いました。
子供たちの変化と勇気ある行動
担任に相談し、親御さんたちにグループチャットを送った翌日。
また、男の子数人がモーリーをからかった発言をりっちゃんに向けて言ったそうです。それを聞いたほかの男の子3人が「そういうこと言うのって良くないんじゃない?」「モーリーまだ赤ちゃんだよ?かわいそうじゃん。」と反論してくれたそうです。
多くの親御さんが家でお子さんに話をしてくださったおかげで空気感が今までとガラリと変わったようでからかっていた男の子たちは何も言えなくなってしまったそうです。
からかっていた男の子たちからの手紙
クラス内でも担任の先生から指導が入ったようでした。私の預けた本をクラスで読んだり、特別支援学級の見学・交流も行ったそうです。
数日後、からかっていた男の子たち数人からモーリーとりっちゃんへと手紙を受け取りました。手紙にはそれぞれ、モーリーとりっちゃんへの謝罪が書かれていました。ただごめんなさいと言うだけでは足りないと先生が判断し、今回は手紙というやり方を選んでくれたのかもしれません。
この手紙以降、男の子たちがモーリーのことでりっちゃんをからかうような発言をすることはなくなりました。
まとめ
きっと医療ケア児のきょうだいや医療ケア児のいる家庭ではこういったことが起こるのは1度や2度ではないと思うのです。そのたびにきょうだい児や親御さんは心を痛めていると思います。そして、どう対処するのがいいか、心底悩むと思うんです。私も今回、娘やモーリーにとってのベストは何か、そしてこれからの学校生活・将来にとってのベストは何なのか、本当に本当に本当に悩みました。
子供たちの学校と言う限られた小さなコミュニティ。これからも毎日顔を合わせる友人であり、中学高校と一緒に成長する仲間としてこの出来事をどう対応するべきなのか…ただそれは悪いことだ!と責めるのではなく『どう一緒に考えて、理解して、思いやりを持てるか』をずっと考え続けていました。
人の心や価値観を変化させることは決して簡単なことではありません。変えることなんてできないことがほとんどだと思います。でも今回ママ・パパのグループチャットにメッセージしたことで、多くの家族がこうしたトピックを家庭で話すきっかけになったと言ってくれました。実際に子供たちの意識が変わり、新しい風が吹いたように空気感が変わりました。周囲の意識を高めることで変わる方向性もあるという新しい気づきでした。これはとっても大きく意味のあったことだと思っています。
今回はスムーズに解決できても次はもっと大きな難題にぶち当たるかもしれません。でも今回の経験が私たち家族を強くしてくれたと実感しています。人に伝えることの大切さや言葉選びの重要性も学びました。ママパパのグループチャットで私たちに送られてきた言葉の数々は確実に私をパワーアップさせてくれたと思っています。
この経験が私にパワーをくれたように、ブログを読んでくれた誰かのパワーになりますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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